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第22回 持続可能な地域の発展を認証制度をとおして考える

タイトル
世界の各地域の自然と文化の紹介や環境問題に関するレポート
執筆者
 
地域
京都市  
テーマ
自然 暮らし 食 ビジネス 環境問題  
更新日
2015年08月10日

執筆者紹介

 大元鈴子(おおもと・れいこ)プロジェクト研究員

専門は環境認証社会学。研究プロジェクト「地域環境知形成による新たなコモンズの創生と持続可能な管理」プロジェクト研究員。2013年から地球研に在籍。

第22回 持続可能な地域の発展を認証制度をとおして考える

 

 環境認証制度*には、国際市場で取引される生産物を対象とするものと、地域内だけで利用されるものがある。たとえば、コーヒーのように、特定の気候下でしか栽培できない食品は、生産地から消費地までのトレーサビリティが確保できる国際認証制度(カエルのエコラベルのRainforest Allianceなど)が好まれる。国内で生産・消費される食品に対しては、よりローカルな認証制度が積極的に使われはじめている。

 

ベトナムでのエビの国際認証

 

 私が「有機エビ」と出会ったのは、家族経営による小規模粗放エビ養殖の村。ベトナム初の国際的な有機エビ認証を導入した、最南端の省、カマウだった。村で生産される有機(=オーガニック)エビの認証基準は、①マングローブが養殖池の50%以上を覆っている。②人工的な飼料、抗生物質を与えない。③養殖密度は2尾/m3ていど。④複数種養殖。⑤稚エビはふ化場のものを使用、等である。もともとの養殖方法が「オーガニック」であったこともあって、多くの家族が認証取得したが、本当のチャレンジは、エビの流通にあった。

 

有機養殖エビの流通

 

 認証取得前は、農家はウェットマーケット向けに、懇意にしている仲買人を通して、養殖池で育ったさまざまな種類のエビ、魚、カニをいっぺんに売っていた。認証取得後は、専門の仲買人に、ブラックタイガーだけをその日の「有機エビ価格」で売る。ブラックタイガーのみが買われていくのは、ヨーロッパでの人気が高いから。サイズも大きすぎず、小さすぎずが求められる。認証制度の要であるトレーサビリティは、特定の仲買人だけがエビを買い付けることで担保されている。

 

 農家は、有機エビ価格もその仲買人の情報を信じるほかないし、ブラックタイガー以外は、べつの仲買人に売らなければならない。結果、手間が増え、価格が通常のエビより安くなることがある、という問題があらわれていた。
 

 

ライムで有機養殖エビを食べる

 

 一般的に、国際市場に組み込まれることは、大規模化や機械化等が促進され、小規模農家が消えていくとされている。このプロジェクトは、認証制度で小規模粗放養殖のエビを国際的に評価することで、小規模農家が従来の養殖形態を維持しながら国際市場に参入する道を示唆するものだった。じっさいには、国際市場の志向や制度の不完全さがその可能性を阻害しており、ひじょうに歯がゆく感じられた。

 

 ちなみにベトナム南部では、ゆでエビをライムのしぼり汁に塩、胡椒、生の唐辛子を入れたものにつけて食べる。ヨーロッパ市場では規格外の「売れない」ジャンボエビのブリブリの食感は病みつきになる。

 

サーモンにやさしいワインを飲む
 

 

 地域に密着した環境問題の場合には、ローカル認証制度という選択肢がある。たとえば、Salmon-Safeというアメリカのオレゴン州とワシントン州限定のローカル認証制度では、サケ科の魚がすめる川を守るための農業を対象にし、農薬の種類や量、農業用水の使い方等の基準を設けている。Salmon-Safe認証を取得した畑で栽培されたブドウで作ったワイン等がラベル付きで販売されている。水でつながるサケとワインの関係はわかりやすく、認証を受けたワインを飲むこともまた、受け入れられやすい。自分たちの土地と限られた水資源の健全性を保つためのガイド役としてのローカル認証制度がある。

 

 認証制度にスケールの違いはあるが、地域資源の持続可能性を環境認証を通じて考えると、生産物と地域の目に見えない価値がみえてくる。
 

 

 

*環境認証制度とは、生産現場の環境への配慮を基準に沿って審査・認証する制度である。エコラベルは、そのような課程を経て認証を受けた生産物に添付され、環境への配慮という触ることのできない(無形の)生産物の価値を、消費にまで伝える役割を担っている。

 

 


さまざまな種類のエビが売られるカマウのウェットマーケット

 


池の中にマングローブが生育する有機エビ養殖池

 


Salmon-Safeラベル付きビール

 

 

 


この原稿は、編集部転載許可のもと、ニュースレター「地球研ニュー スNo.48」の原稿を転載しています。

 

 

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