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Think globally, act locally. この言葉を初めて耳にしたのは大学生の時だ。当時私は、地球温暖化や生物多様性の保全などといった、いわゆる「地球環境問題」に興味を持ち、環境経済学を学ぶゼミに所属していた。当時、地球環境問題として盛んに言われていたのは、とにかくグローバルな、地球規模での環境問題であって、私自身も「温暖化を解決する!」なんてことを考えていた。
もちろん、そういう思いは大事だ。でも、「地球環境問題」はとにかく壮大すぎた。いくら文献や資料をあたっても、全然ピンとこなかった。どうしても自分とグローバルの間の隙間が埋まらない。「南米沖の海水温が」と言われても、普段の生活の中では「明日の天気」の方が大きな関心事であって、地球環境問題を生活の中で実感することはなかなかできなかった。
地球規模の視点を持ちつつ、身近な範囲で行動しろー今ではすっかり有名になった冒頭の言葉を、所属していたゼミの教授は常に学生に言い聞かせていた。それまで「自分」が全然登場しない世界での出来事に頭を悩ませ、嫌になりかけていた私は、この言葉にすっかり触発されてしまった。それからというもの、京都の伝統的な技術やサービスを使って廃棄物の削減を目指してみたり 、割箸のルーツを探って奈良の吉野の割箸生産者の組合 に通ったりしながら、自分の身の回りにある物事がどこに繋がっているのかを意識するようになっていった。
今は京都の出町柳を拠点にして、この地域の色々な情報を掲載するフリーペーパー を作っている。この場所に関わる人同士の仲間づくりの基盤をつくると同時に、自分たちの考えやアイディア、やりたいことを発信する媒体を持つことが目的だ。この仕事をしていると、自分がどんな場所で暮らし、何と関わって生きているのか、それが世界の中でどんな意味を持つのかということをよく考える。漠然として見えたグローバルという概念も、考えて見れば、無数のローカルの総体なのであって、そこには無数の人や生き物の営み(もちろん自分も)が含まれているということに改めて気付かされる。
グローバル化に対する反動か、最近は世界的にローカルへの関心が強まりつつあるように感じる。私もその流れの中にいると自覚しているし、ローカルすなわち身近な世界を大切にしたいと思っている。その一方で、ローカルすなわち自分の手の届く範囲だけで完結し、そこに埋もれてしまうことを恐れている。
「オーパ!」に描かれるアマゾンには、そこに生きる魚や動物、植物、そこで暮らす人々に対する筆者一行の驚き、「オーパ!」が満ち溢れている。その一つ一つは徹底的にローカルだけど、アマゾン川という巨大な流れがそれぞれの要素をつなぎ、一つの大きな「オーバ!」を形作っている。
カミソリのようなピラーニャの歯と鴨川を流れる水、自分にとってのローカル、他人や他の生き物にとってのローカル、それぞれをつなぐ関係性、その総体としてのグローバル、世界。自分と世界をつなぐものがどこかにきっとある。埋もれそうになったとき、閉じそうになったとき、この本はいつも私を引き上げ、開かせてくれる。