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Vol.018金沢城のヒキガエル~競争なき社会に生きる


精神科医
高木俊介さん
1957年生まれ。精神科医。
「精神分裂病」という精神障がいの名称を「統合失調症」に変更し、精神障がい者のノーマライゼーションへの足がかりをつくる。
2004年より、ACT-Kという、重度の精神障がいを抱えた人への、多職種による24時間365日の訪問生活支援を行う。
将来自分たちで食っていける障がい者福祉を目指して、地ビール工房「一乗寺ブリュワリー」を立ち上げ、現在各地の地ビールフェスティバルに出品、好評を得ている。
○一乗寺ブリュワリー>>>http://www.ichijoji-brewery.com/
ひょんなことで福島の被災者との縁が生まれ、今年の夏から福島の子どもたちを八丈島で保養に過ごしてもらうための、福八子どもキャンププロジェクトを発動中。
著書:「こころの医療宅配便」文藝春秋社、「精神医療の光と影」日本評論社
「私はふだんタバコは吸いませんが、最近の一方的な禁煙の流れには恐ろしいものを感じておりメディアに出る時はタバコを持つようにしています」とのこと。
書名/
金沢城のヒキガエル~競争なき社会に生きる
著者/
奥野良之助

 原稿を引き受けておいて今さら言うのは、とっても、とっても気が引けるのだが、私はエコには興味がない。今、私は自分が思うことのいくつかのことの実現に向かって突っ走っているので、お金で大量の時間を買っている。車を使いタクシーに乗る、全自動洗濯機と乾燥機を回しっぱなし、仕事がはかどるようにエアコンはガンガン使う、毎日コンビニでご飯をすませる。これで環境にいいわけない、第一、体にいいわけない。
 しかし、と思うのだ。今、私が精神障がい者の地域生活を支援するために構想していること、重度の障がいを抱えた精神障がい者の訪問による生活支援、重度障がいがあっても働ける場づくり、そして最近かかわりはじめた福島の子どもたちを放射線の影響から守るために八丈島でサマーキャンプしてもらうプロジェクト、等々に費やす時間を犠牲にして、一人でコツコツとエコってみて何になる?
 それよりも何とかすべきは、成長という幻想から抜け出ることができない、この新自由主義に染まりきった社会とそれを支える人々にこそ、もっとエコな生活を心がけてもらう、それができないなら(できないだろうなぁ)、歴史の表舞台から退場願うべきではないか?私たちの社会はいつからこんなにも競争にあけくれ、そのために資源を、エネルギーを浪費するようになったのだろうか?
 で、私が紹介したい本は、その競争ばかりを煽る新自由主義が日本を飲み込みはじめた1995年(バブルがはじけた!)、ひっそりと出版された一冊、奥野良之助著「金沢城のヒキガエル~競争なき社会に生きる」(どうぶつ社)。衝撃的な本なのです。これ一冊で、ダーウィンの信奉者の金科玉条である「生存競争」「自然淘汰」を否定してしまっているのです。
 著者は金沢城本丸跡に棲むヒキガエルの生態を研究している。ヒキガエルの研究をする限りは、ヒキガエルの気持ちがちゃんとわかるようにならなくてはならない、と主張する著者は、ヒキガエルの世界に競争がないことに胸打たれる。そして、生後すぐに左足を失った障がいヒキガエルに出会う。そして10年近く、彼を見守るのである。3年目の春、彼は大人になって、繁殖池に現れ彼女が来るのを待つ。次の年も、また次の年も・・・。そしてついに7年目の春、彼はその手で彼女を抱きかかえた・・・彼の存在は、動物社会が現在の人間が勝手に言いふらして回っているような「激烈な競争社会」では決してないことを教えてくれている。
 え、だからどうした、って?うーむ、まぁ、こんなことをまじめに研究している学者がいるというだけで、うれしくなる。究極のエコロジーではないでしょうか。
 

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