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Vol.020古代から来た未来人 折口信夫

古代から来た未来人 折口信夫

音響ギターポップバンド「空中ループ」ボーカル,ギター
松井省悟さん
1983年生、京都生まれ、京都在住。音響ギターポップバンド「空中ループ」のボーカル、ギター、ソングライティングを担当。気仙沼小原木タコちゃんテーマ曲などの楽曲提供、ラジオジングル制作など音作家としても活動。趣味は写真と民俗学。
異質な世界の息吹に、直で触れるような「音楽」を求めて、各地を日々邁進中。
書名/
古代から来た未来人 折口信夫
著者/
中沢新一

歌とは何か。その正体は?
そういうことをよく考えることがあります。
ですが、正直なところ、答えはよくわかりません。

答えは決してひとつではないだろうし、いろんなことが考えられると思うのですが、
そのひとつのヒントがこの本にはあるような気がしています。

この本は、民俗学者折口信夫の研究、思想、心を、人類学者中沢新一が紐解いていく形で書かれています。

特に興味深いのは、古代人の芸能について書かれた部分です。
芸能の起源は遥か古代にあり、人類の表現活動のはじまりにまで繫がっているというのです。

そして、「異質な世界との強烈な出会い」がなければ、文学や芸能、宗教は生まれないというのです。
「人の心が共同体の「外」からやってくる、どこか異質な体験に触れたとき、はじめて文学や芸能や宗教が発生してくる」と。

異質な世界とは、「人間の知覚も思想も想像も及ばない、徹底的に異質な領域」、「すでに死者となった者やこれから生まれてくる生命の住処」、「未来に生まれてくるはずの未発の生命力が宿っている」ものであり、そしてそれがうまく表現された時、「人は不幸な感覚から開放される」というのです。


音楽をやっていると、時々、この異質な世界への通路が開かれたのかもしれない、と感じることがあります。

亡くなった祖母へ贈る歌を書いていた時のことです。
なかなか詞にならず、一年以上かかりました。

ある日、ある一節の詞がふっと出てきたとき、涙が止まらなくなり、
そのまま泣きながら詞を書き上げたことがありました。

祖母の他界から一年以上経ち、心の整理もつき泣くこともなくなったような時期でした。

その一節は、何か自分で書いたような気がせず、
脳や知覚では捉えきれない何かが、自分を突き動かしていたように思います。
何がそうさせたのか。他界した祖母なのでしょうか、それよりももっと大きなもの、つまり死者の世界という絶対的な外部と通じた、のでしょうか。

はっきりしているのは、その曲が完成したとき、言い知れぬ幸せな感覚と安堵感があったことです。
祖母がいつでも傍で見守ってくれているように思えました。

それはつまり、祖母との死別というどうしてもあらがえないものから自由になった感覚であり、
そこには、人間ひとりの一生の時間を遥かに超えた「永遠」とでも言うべきものが漲っているように感じます。

古代人の世界観に出てくる「異質な世界」とは、きっとこの「永遠」も含んでいるのではないかと思えます。
そしてそれを表現しようとするとき、人は歌いはじめたのかもしれません。

この本に取り上げられた折口信夫は歌人、詩人でもあり、そのような世界とつながる経験をしたのかもしれません。
 

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