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Vol.026極北のおおかみ少女


スコップ・アンド・ホー
井崎敦子さん
1964年生まれ。立命館大学を卒業後、書店員、民藝店店員、デパート店員、NPO職員など職を転々。7年前、同志社大学大学院社会人講座・有機農業塾に入塾、長澤源一氏の指導を受ける。現在も大原で小さな畑を耕しつつ、昨年6月、左京区に八百屋カフェ「スコップ・アンド・ホー」をオープン。美味しいものを通じてつながってゆくご縁が嬉しい日々。


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書名/
極北のおおかみ少女
著者/
ジェーン・クレイヘッド・ジョージ


まさか自分が八百屋さんになるとは思ってもいませんでした。
今の仕事に直接影響があったというよりは、子供の時に読んで、環境のことや先住民族のこと、たくさんの好奇心のきっかけになったと思う一冊をご紹介します。

お話の舞台は1970年代のアラスカです。エスキモーの村にも車や飛行機が入り込み、学校が出来、人々は狩りをすることを止め、年金をもらって食べ物や衣類を買う暮らしに慣れています。
13才の少女ミヤックスも、訳あって狩りの名手である父親と離れて町で暮らし、白人の少女と文通して、テレビや信号機を見てみたいと思っています。
ある日、突発的な事情のため雪原で道に迷い、生死の境に追い込まれたミヤックスは、父親に教わった知恵を駆使し、オオカミの群れに助けを求めます。
オオカミの生態を観察して群れに受け入れてもらい、リーダーのアロマックや子オオカミのカプと良い距離を保ち、自らも罠を作り狩りをしながら逞しく雪原を旅します。
ようやく懐かしい父親の暮す町の近くまでたどり着いた時、ハンターに襲われ、アロマックは群れを守って標的になり死んでしまいます。
なんとハンターはミヤックスの父親で、かつての誇り高いエスキモーの狩人は報奨金目当てにオオカミを殺すようになっていたのです。
失望したミヤックスは再び一人雪原に向かいます。
自分はエスキモーなのだからエスキモーとして生きよう、旅をし狩りをして動物達と共に暮らそう、と。
けれど一夜明け、彼女は再び父親の家に足を向けなおして、物語は終わります。

最後にミヤックスがアロマックの霊に歌いかけます。

『あざらしはとても少なくなり、くじらはこなくなった
動物達の霊は去ってしまったのだ
アロマック、アロマック、あなたは私の養い親
私の足はあなたのために踊る
私の目はあなたのために見る
私の心はあなたのために考える
そしてその心は考える、この嵐のような物音のする夜
おおかみとエスキモーの時代はもう終わったのだと』


読み終えて、「大切なものはすでに失われている・・」子供心にそう感じました。
同じ頃に『モヒカン族の最後』を読み、それもとても印象深いのですが、このお話は、主人公が女の子であること、たった一人で自らの暮らし方を通じて時代の変化に抵抗し、最後に静かに受け入れる様子が、特に心に響きました。
そして子供の私は、『ミヤックスは変化を受け入れはしたけれど、決して諦めたのではない』、そう思ったのでした。
『大切なものはすでに失われている、けれどそれでも生きていくのだよ大きな悲しみの中で小さな幸せを見つけ決してあきらめずに生きていくのだよ』、ミヤックスとオオカミが教えてくれたのはそんなことで、40数年経ってもやっぱり、変わらずそう思っているのです。
作者の女性、ジェーン・クレイヘッド・ジョージは動物学者でもあり緻密な自然描写が魅力で、なかでもオオカミの賢さは印象的です。

 

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